タワマン節税裁判で司法判断

実勢価格と相続税路線価のかい離を利用した「タワマン節税」の是非を巡って納税者と国税当局が争っている裁判で、最高裁は当事者の意見を聞く上告審弁論を3月に開くと決めました。税法上は合法であっても当局が「税逃れ」とみなせば否認できる、いわゆる「総則6項」の適用基準について、司法が改めて考え方を示す可能性が出てきました。

 裁判で争われているのは、原告が相続で取得した高層マンションの相続税評価額の正当性。故人は2棟のマンションを計14億円ほどで購入しましたが、高層階の実勢価格が反映されない相続税路線価では2棟の評価額は約3億円でした。相続人が路線価に従い申告をしたところ、当局が「路線価による評価は適当ではない」として否認し、約3億円を追徴課税した事例です。こうした実勢価格と路線価のかい離を利用した節税策は「タワマン節税」と呼ばれ、多くの富裕層が相続税対策に活用してきましたが、近年では当局は積極的にこれらの税務処理を否認し、追徴課税を行っています。

 このとき当局が否認の根拠として使うのが、相続税の財産評価のルールを定めた財産評価基本通達の総則の第6項、いわゆる「総則6項」です。同項では、通達によって評価することが「著しく不適当」と認定できるケースに限り、「国税庁長官の指示を受けて評価する」と規定しています。評価ルール全体における例外規定とも呼べる内容で、この項目を適用すれば最終的には国税側の〝言い値〟が適用されることになります。「総則6項は伝家の宝刀」と言われるゆえんです。

 現行の税法にのっとった税務処理であっても後から否認できる総則6項の適用については批判の声もあります。3月に開かれる弁論では、最高裁が総則6項の適用基準をついて具体的に踏み込む可能性もあり、注目が集まります。

<情報提供:エヌピー通信社>