株式非公開化増加にみえる株式市場の変化とは その2

 ここ何年か、上場会社のMBOによる、株式非公開化(上場をやめること)が増加しています。MBOとは経営者自らが自社の株式を買い取って、その後、株式を非公開にして上場をやめる手法をいいます。
 なぜ、企業は上場を廃止する道を選ぶのでしょうか。理由は多岐にわたりますが、狙いの一つは上場コスト削減があります。上場企業は「パブリックカンパニー」として、財務諸表などの情報を開示する責務があります。加え、事業を伸ばし、株価を中長期的に上げていくことが期待されます。
 株主の中には、アクティビスト(物言う株主)もおり、経営に関して厳しい要求が来ることもあります。結果、経営者は中長期だけでなく短期的な利益確保を意識しなければならず、経営がやりにくくなってしまう場合もあります。上場を廃し株式を非公開にすることで、上場維持に関するコストを削減でき、自由な経営が行えるようにもなります。

 ただ、MBOを実施するには、既存の株主から株式を買い取らなければならず、買い取るために多額の資金が必要になります。MBOを実施するための資金を経営者が自ら調達する場合もありますが、多くはプライベートエクイティ(PE)ファンドと呼ばれる、投資ファンドから調達しています。
 従来は、MBOを実施しようとしても資金が足りず断念するケースもありました。それが、PEファンドの成長があり、多額の資金を調達できるようになったことで以前よりも容易にMBOが可能になったのです。PEファンドの成長なくして、MBOの件数増加はなかったといえます。
 MBOの増加やPEファンドの成長から、株式上場の経済的意味が変化していると指摘する声もあります。世の中に株式市場が誕生し、資本主義が本格的に発展してから、何年もの月日が流れます。現代は資本主義が大きく変わる局面にいるのかもしれません。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)