株式非公開化増加にみえる株式市場の変化とは その1

 ここ何年か、大手上場会社の株式非公開化(上場をやめること)が相次ぎ、中でもMBOが増加しています。MBOとは、Management Buy-Outの略で、経営者自らが自社の株式を買い取り、その後、株式を非公開にして上場をやめる手法をいいます。昨年は、リポビタンのCMで知られる大正製薬や進研ゼミのベネッセなどがあります。今年にはいると、賃貸住宅の仲介会社や食品会社など、いずれも知名度の高い大手企業がMBOを発表しています。

 なぜ、経営者は株式上場をやめるのでしょうか。本来、会社が株式市場に上場すると多くのメリットが得られます。第一は、株式を市場で売り出し、資金を調達できるようになります。こうしたエクイティ資金は返済義務がなく利息も生じません。もう一つのメリットは上場によるステータスもあります。上場には信頼できる会社であることを示すため、要件が定められています。結果、企業にとって、上場はステータスとなり採用面や取引先の拡大にもプラスに働きます。

 数多くのメリットを手放してまで、上場を廃する理由は多岐に渡りますが、一つは事業再構築が挙げられます。経営者が改革の必要性を感じて、主要な資産の売却や組織体制の再構築を実施しようとした場合、株主の理解を得なければならない場面にぶつかります。ところが、ときには株主の賛同を得ることができず、意思決定に支障が生じることもあります。そこで、上場を廃してしまえば、少数の人の合意で意思決定ができるようになります。

 実際に、MBOで非上場化した企業に、すかいらーくがあります。同社は構造改革に取り組み2014年に再上場しました。このように、一度、非上場化したあと改革を行い、再度、上場企業となるケースもあります。ある意味、MBOは企業改革を進めるうえで優れた手法ともいえます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)