経営者の含み益から株主の評価益に その1

 我が国では、上場企業においても、開示情報は必要最低限にして会計情報を比較的クローズドにしていた時代が長く続きました。そこでは資産評価は取得原価主義を基本にして、簿価と時価の差額は会計上表現されない含み損益として簿外に置かれていました。株主等の外部の利害関係者は含み損益の存在に薄々は感づいてはいても、明確にはつかんでいませんでした。含み損益情報の詳細を正確に把握できていたのは会社内部の経営者だけといってもいいでしょう。

 簿外に置かれた含み損益の処理について、詳細を知らない株主等の会社外部の利害関係者が口出しすることは難しく、実質的に経営者に任されていました。こうした状況では、含み益は経営者にとってまことに都合のいい打ち出の小槌のようなものでした。なぜなら、業績が不振で赤字を出したときとか、リストラ費用等の一時的な損失が発生したときなどに、経営者は含み益のある資産を売却して実現益として表に出し、損失の穴埋めに使うことができたからです。つまり、含み益は経営者の経営の失敗を粉塗する隠し財源として利用されていたのです。

 しかし、グローバル化が進展する中で、会計基準も国際基準に合わせる形で、投資家等の外部の利害関係者に情報をできるだけ開示するように変更になりました。その結果、有価証券等で時価の明確なものは、評価損益として財務諸表に反映させるように会計基準が変わりました。売買目的有価証券の評価損益は損益計算書に計上し、税額相当分を控除した上で、利益の構成要素として自己資本に算入されます。その他の有価証券については、損益計算書は経由しませんが、貸借対照表上で税額相当分を控除して、自己資本に算入されます。つまり、現在は、有価証券の簿価と時価の差額は含み損益ではなく、評価損益として、財務諸表の自己資本に算入されることになります。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)