トランプ政権の経済政策には協調して行動することにより経済的利益の総和を増加させるという発想が決定的に欠けています。一方が関税をかければ、他方はそれを黙って見過ごすことはできません。多くの場合、報復関税に発展します。報復関税をかければ、経済的総和は100から90になってしまう可能性すら存在します。そうなってしまえば、たとえディールで勝っても取り分は減ってしまうかもしれません。
このようにWin-Winの関係に持ち込めば、両者ともに分け前が増えるにもかかわらず、トランプ政権の経済政策にはWin-Loseの関係における勝者になることに執着する余り、Win-Winの関係を築くことに対する配慮が欠けているように思えてなりません。
これまでドルを基軸通貨とするブレトンウッズ体制に基づく自由貿易の拡大と経済のグローバル化、そしてそれに伴う国際協調の進展は当然のものとし、それを前提に政府も企業も政策を進めてきました。それは単に世界の大勢だからということだけではなく、経済理論的、倫理的にも正しいから、この潮流は不可逆的なものだと安心していたのです。ところが、その体制の創設者であり、牽引者でもあった世界最強国のアメリカの大統領がそれに公然と異を唱え、「自国ファースト」を掲げ、国際協調から弱肉強食の世界へ戻ることを宣言したのです。その衝撃はとてつもなく大きいように思います。トランプ政権が進める外交政策のドラスティックな変更も併せて考えると、世界は今、歴史の転換点に立っているのかもしれないという思いを強くします。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)